
ある時、少年野球のコーチをされているお父さんと話す機会があって、息子さんが入っているチームの話をされていたのを思い出しました。
確かに、練習では出来るんだけど試合になったらやってきたことを全然パフォーマンスできない選手っていますよね。
そして、なぜかそういう空気って他の選手にも伝染しちゃったりするんですよね。それが弱いチームと言われる原因なんですけどね。
本番でビビらない強い心臓

そういう私も、40年近く野球をやってきて『どうしよう』『このままじゃ打たれてしまう』とか余計な事ばかり考えて、パフォーマンスを発揮できなかったことが何度もあります。
ようするに、「打たれるのが怖い」「点を与えてしまったら」「これで負けてしまったら」などと自分ではどうする事も出来ないことでクヨクヨと足りない頭で考えてしまって前に進めなくなってしまっていたんです。
今でこそ、色々な経験を積んできたので、ちょっとのことではへこたれない精神力(ビビらない強い心臓)を身につけたかもしれません。
勝負の世界でビビっていたら負けてしまうのは当たり前です。もし十分なパフォーマンスがまだ出来ていないとしても、相手には自分が出来ないことなんて分からないわけですから、ハッタリでもいいんです。『俺のプレーを見せてやる』ぐらいの意気込みを持って勝負に臨むべきです。
結果負けたとしても、それは勝負が終わってからのことですから、素直に相手に敬意を表して、自分が出来なかったことをまた練習すればいいじゃないですか。
チームを強くしたいなら・・・

チームを強くしたいなら、選手たちを信じてあげる大人の力が必要だと私は思います。ビビるような弱い気持ちはどこから生まれるでしょうか?
「自分のせいで負けたらどうしよう」「ここで打てなかったら怒られる」「フォアボール出したらどうしよう」「エラーしてしまったら」などなど、こんな思いから選手は委縮し、自分のパフォーマンスが出来なくなってしまうんです。
なので、せっかく強くなりたくて一生懸命練習してるんですから、せめて試合だけは楽しくノビノビとプレーさせてあげて欲しいんですね。
練習では、厳しい指導ももちろん必要です。それは、実戦の場でしっかりパフォーマンスできるための練習ですから、手を抜いていたり、何も考えないで惰性で練習していれば叱咤激励は必要だと思います。
逆に試合の時は、日々の練習で頑張ったことを試合で思い起こさせ、『あなたは出来るんだよ』『大丈夫、信じてるから思いっきりやってきなさい』と安心と勇気を与えてあげたいですね。
最後に
よく、「ノミの心臓」「ガラスのハート」などとビビってしまう選手のことを指す言葉がありますが、反対に「心臓に毛が生えてる」「図太い神経」などとちょっとのことでは動じない選手に対して使う言葉もあります。
これは、まわりで見ている人たちが感じている言葉であって、どちらにしてもその選手が実際にそうであるかはわかりませんよね。
野村克也氏がヤクルトの監督時代に、ブルペンでは素晴らしいボールを投げるのに、いざゲームになると緊張して失敗を繰り返していた選手を再生させるために言った言葉があります。『今日ダメだったらクビだからな』もちろん本当にそう思っていたわけではなく、どうせ緊張するなら極限まで緊張させてみようといういわば、ショック療法だったそうです。その選手は見事その試合で自分の持っているパフォーマンスを発揮し、その後も活躍してくれたそうです。
その野村克也氏の著書『野村再生工場―叱り方・褒め方・教え方』の一文に次のような言葉があります。
もちろん、本番で力を出し切れないすべての人間に対し、山本にしたようなショック療法が効果的というわけではない。人間の感じ方はそれぞれ違う。同じことを言っても、それで大きく化ける選手もいれば、傷ついてしまう選手もいる。だからこそ、自信をつけさせるにあたっても指導者たる人間は、選手をよく観察し、それぞれに適切な指導を行わなければならないのだ。まさに「人を見て法を説け」である。
野村再生工場―叱り方・褒め方・教え方 より
私たち大人が、子供たち選手をよく観察して、その子に合った言葉を投げかけ自信をつけさせてあげることが、どんな場面でも動じない強い心臓を作る方法なのかもしれません。
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